2. フラクタル構造 |
フラクタル宇宙論では宇宙を本質的に一つの粒子だと考える。
宇宙を構成している無数の粒子の中には、また別の小さな宇宙が存在しているだろう。
そして人もやはり宇宙の一構成員であるゆえに、フラクタル宇宙は人を中心に描写することが可能だ。
即ち、私たちの属しているこの宇宙は、何らかの巨大な存在の内部にある小さな粒子であり、我々の宇宙と同じような粒子が無数に存在していることだろう。
さらにその巨大な存在の頭上には、別の広大な宇宙が広がっている筈であり、その宇宙もまた、もっと巨大な存在の内部にある一つの粒子に過ぎないだろう。
私たちの身体は無数の限りなく小さな粒子で構成されている。
そのひとつひとつの粒子の中には、極小の人々が住んでいて、私たちを巨大な存在だと考えていることだろう。
そしてその小さな人々の身体の中には、さらに小さな無数の宇宙が存在しているに違いない。
もし、こうした考え方が真実だとしたら、私たちはこれを証明出来ないだろうか。
それはもしかしたら、意外に簡単なことかも知れず、似たような概念として肉薄してみることが可能であるように思われる。
簡単な例を一つ挙げてみよう。
ここに三角形が一つあるとする。
その三角形をコピー機に入れ、二倍に拡大させてみよう。
そして、大きいものと小さいもの二つの三角形を目の前に置いてみる。
この二つの三角形は全く同じ形である。
同じ形同士では、互いに対応する辺の比率を計算すると、決まって同じ数値を見せる。
同じ形は本質的に同一性を持ち合わせている。
この同一性は簡単に証明することが可能である。
もし小さな三角形を二倍に拡大したとしても、拡大した三角形を半分に縮小すれば、二つの三角形は全く等しくなる。
その二つを区別する方法はない。
従って、もし二つの三角形が同じ形だということを証明すれば、私たちはその二つが本質的に同一性を持っていると結論出来る。
この話は三角形の大きさによらず、通じる話である。
ではこれから片方の三角形を少しずつ拡大し、もう片方を少しずつ縮小させてみることにしよう。
大きな三角形が、仮に小さな三角形の百万倍の大きさになったとしても、この二つの間にある同一性には何らの変化も起こらない。
それでは次に、片方の三角形を宇宙の大きさのレベルにまで拡大し、もう片方の三角形を素粒子レベルにまで縮小したと仮定しよう。
このような場合においても、私たちがその二つの三角形の互いに対応する辺の長さを測定し、比較することさえ可能なら、二つの三角形が同じ形だと証明するのに何の困難もないだろう。
この論理はシンプルなものであり、どこにも異論はないと思われる。
では、私たちが巨大な存在内部の粒子である宇宙のあらゆる要素を測定し、私たちの身体の中でそれらに対応する粒子を探し出すとしよう。そしてその粒子のあらゆる要素を測定して、全ての対応要素の大きさの比率が一致していることを証明出来たなら、私たちは巨大な存在と我々自身が本質的に同一な実体であることを認めなければなるまい。
これは宇宙のフラクタル構造を究明する賢明な方法になり得る筈である。
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